「ふぅ〜、今日もいい朝だな・・・。」
朝。
蒼天の青空の中、私・・・、犬神つるぎは学校への道のりをひたすらのんびりと歩き続けていた。
今日はいつもより外『特有』の騒がしい音がしない。だからだろうか?不意に空を見上げてみる。
一点の曇りのない空・・・・・・。小鳥の声だけが聞こえる。ほんと今日はいつもより格段と空気が綺麗に感じる。
車の騒音も聞こえない。こんな日もたまにはあるんだな、こんな静かな時間が毎日でも続けばいいのだが・・・。
柄にもなく、そんな思いにしばらくの間耽っていた・・・・・・。
思いのほかいつもより遅く1年D組の教室に辿り着く。
さて、今日も一日頑張るか・・・。そんな気分の中、少し自分の中でテンションを上げつつドアに手を掛ける。
ガラガラ・・・・・・
「待ぁ〜てぇ〜」
「きゃあぁぁ〜、助けて〜!」
「・・・・・・・・・」
教室のドアを開けると全身黒服に何も描かれていないお面、
そして手には何故か猫じゃらしを持った変人と、
ほぼ100%泣き顔になった、このクラスきってのドジキャラである宮田晶が、
教室中を走り回っていた。
何をやっているんだ?と声に出そうと思いつつもう少し状況を理解するために様子を眺めてみる。
「もう逃げられないぞ〜」
「ふえ〜ん、やめてくださいぃ〜・・・」
「止めて欲しくばその胸の膨らみを全部私に捧げろ〜」
「そ、そんなの無理ですよ〜・・・」
「ならばその命を私に差し出せ〜」
「そ、そんなぁ〜・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・何をやっているか、全く以って解からない。
これは関わらない方がいいな・・・。そう脳が警告しているのでここは素直に関わらないことにする。
「さぁ、その命を差し出せ〜」
「きゃあぁぁ!い、命ばかりはお助けを〜・・・」
関わらないことにする。
「さぁ、さぁ!」
「ふ、ふぇ〜ん!そんなこと言われても〜・・・」
関わらないことに・・・・・・
「その手と足と身長も頂こうか〜」
「えぇ〜、駄目ですよぉ〜。ふ、ふぇ〜!おかあさぁ〜ん・・・」
・・・・・・はぁ〜、まったく、見ていられん。
「・・・・・・お前ら、朝っぱらから何やってるんだ?」
「あ、い、犬神くぅ〜ん!た、助けてください〜!!」
「む、新たな生贄か?貴様もその命を私に差〜し〜出〜せ〜」
また訳の解からん事を・・・。
それに宮田、お願いだから服にしがみつくのはやめてくれないか?
それに抱きつかないでくれ。あと顔を制服に埋めないでくれるか。
・・・涙と鼻水が制服に付くし少し変な気分になるだろう。
まあ、そんなことは気にせず黒服お面の変人に言ってやる。
「悪ふざけも程々にしとけ、芹沢」
「ふぇへ?芹沢さん・・・?」
「な、何の事だ〜」
「お面からお前の髪がはみ出てる。それに第一、こんな事するのはお前しかいない。」
一瞬、ピクッとなったかと思うと自分の頭を触り、しまったぁ〜と言う声が聞こえた『気』がした。
あくまで気がしただけだから実際は良くわからないが。
黒服お面の変人は観念したのかお面と黒服を脱ぎ捨て、その独特の髪を抑えながら、
芹沢茜が笑いながらこう答えた。
「いやぁ〜、ごめんごめん。あまりにも怖がるから面白くて、ついさぁ〜・・・」
「お前なぁ・・・。もう少し限度があるだろう、人として」
「せ、芹沢さぁ〜ん!!脅かさないでくださいよ〜。」
そう言いながら、相手が芹沢と解かったとたん、わなわなとその場に座り込む宮田。
「だからごめんってば、晶ちゃん。」
「本当に怖かったんですよ〜!」
「悪かったって!」
「もう〜・・・」
ふぅ〜、やっと解決したか・・・。そう思っていたのも束の間。後ろから聞きなれた声がした。
「もうその辺でいいかのう?」
「「「えっ?」」」
3人がそろって驚きの声を上げる。
この声・・・、まさか!?そう思いながら振り返ると・・・、
「なっ!!ジジイ、いつの間に!」
「な〜にを寝ぼけたことを言っとる?さっきからここにいたじゃろうが。それよりも・・・・・・」
いつの間にか、ていうか本当にいつ来たのだろか?
すでにジジイが出席の確認をしていた。
「こら、宮田に犬神、それに芹沢。早く席に着かんか。」
そう言われ渋々席に行く3人組み。不意に時計を見て驚いた。
あんなミニコントだけですでにかなりの時間を浪費したようだ。
朝はゆっくりしようと思っていたんだが・・・。
はぁ〜、と誰にでもなく、聞こえないようにため息をつく。
このクラスに関してはこれからもこんな感じでいくんだろうな。
面倒事は南条とその動物達だけで十分だって言うのに・・・。
しかし・・・・・・。そんなクラスでも私は結構気に入っているんだがな・・・。
<終>