埋め
***
もはや相談所と化した宮本研究室から、その日の放課後は珍しい声が聞こえていた。
「『一緒にお風呂に入っても、お兄ちゃんは私に何も感じてなさそう』
……って、雅ちゃんから相談を受けたんだ」
「当たり前だ……」
犬神つるぎの顔が、入学以来何度も見せている、呆れたような当惑したような表情になる。
「それで、良い機会だったからお前をどうやって振り向かせるか三人で画策中、」
「画策すんなよ!!」
「怒んなよそんなに! まだそんなキレるとこじゃ無くね?
……んで、画策中に、望ちゃんが
『もし宮本さんや雅ちゃんが
スケスケの布やヒモとか露出衣装を着てたら
雅ちゃんのお兄ちゃんはなんて言うかなー?
やっぱ、可哀想な子だなーとか軽くあしらわれちゃうのかなー?
それとも鼻血を出して昇天しちゃったりしてー!』
とかいう案を出したんだ」
「な……何? 宮本先生が……雅と?
ヒモ……ヒモみたいなやつを」
「ヒモかスケスケだ」
「……風邪を引いてしまいますよ?」
「ぶっ! ……ちょっと、ほんとに、いい加減にして欲しい」
「はは……しかしだ、仮にそれで私が
_ ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
⊂彡
となったら、それはそれで引くだろうが」
「引くな……」
「だろう?」
「そうか……まあ、実際に私がそんな事したら大多数の人が
『ベッキー、何かの病気……?』って聞くような気がするな……」
「まあ、そういう『愛すべきキャラ』って事だろう……
それはそれで、私は素敵なことだと思いますよ」
和気藹々とした空気の研究室。
ドア一枚を隔てて、黒くおぞましい炎が巻き上がっている事を二人は知らない。
「そ、そんな……犬神くんと……」
「宮本さんが……」
「とっても仲良さそう……」
「いつの間に……」
「ケ……」
「ケロ……」
「ケロケロ……」
南条操と犬神雅、耳をそばだてる二つの影を見た廊下の通行人は、
誰しもカエルの大合唱を予感し、逃げるように帰路に着いていったという。