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『補習』追試5名


1−A組 柏木優奈
1−B組 秋山乙女
1−C組 片桐姫子
1−D組 芹沢茜 宮田晶

「… …」
「… …」
「… …」
「… …」
「… …」

廊下の掲示板に貼り出された一覧表を見て、優奈、乙女、姫子、茜、晶は落胆した。

この五人はいつも赤点ばっかで、学校内でも有名な追試常連である。

前に生徒会主催の缶蹴りゲームに勝利し(というか一条の裏切りにより)、追試を免除になった事はあるが

テストで赤点を免れた事は一度も無い。

そんな落胆している追試組を、やれやれと心中で思いながら桃瀬修は自分の教室に戻った。

そして放課後………

「はい、どーも宮本です。本日も予定を変更して補修にしまーす」

「せんせいー、質問あるんだけど、いいか?」

「じゃ桃瀬だけ質問いーぞ」

「……まあな、追試が補修になっても別に問題はないと俺は思うぞ」

「なら別に質問しなくてもいいじゃないか」

「いや、俺の言いたいことはそういうことじゃなく……何で俺がこの補修に呼び出されたんだ?別に今回は赤点とってないぞ」

「そりゃ、お前が私の代わりに勉強を教えるからだ」

「……俺、勉強教えたいなんて一言も言ってないのに……」

「仕方ないだろ。お前の名前は『修』だからな。補『修』、な?」

「それが理由かよ……。」

「というわけで後、よろしく〜」

止める暇も無く、逃げるように教室から離れていくレベッカの後姿を修はただ見送るしかなかった。

以前、修は期末テスト当日に学校をサボりこの五人と補修をすることになったが、先ほどのようにレベッカが勝手に

五人の補修のことを修に押し付けたことがあった。

あの時は修も補修することになってたのでまだ納得ができたが、今回はそうもいかない。

何時もそうだがクセのある女子達にうまく利用されてしまうのは、修の成績優秀、運動神経抜群、料理も得意だけでなく

清掃活動のボランティアにも自分から進んでする性格のせいでもある。

修自身は多くの事を押し付けられるのにうんざりするが、それとは裏腹にしっかりと良い結果をだす。

例えば、学園祭で修の作ったクレープは大変評判がよく、C組の模擬店は儲かった事や前回の補修でこの五人に勉強を教えた後の

確認テストでは、全員合格した事もある

やはりこういった頼み事をするなら、要領の良い人が一番なのである。

――桃瀬君、少し可哀想だけど私は嬉しいな。

「桃瀬君って、いつもこういった不憫なところはくるみちゃんそっくりだよね〜」

「…だまれ。」

――今度も桃瀬君に勉強教えてもらえる。

頭を押さえて負のオーラを出してる修を嬉しそうに見ながら、優奈はそう思った。

その後、修の教え方がうまい事もあって優奈を除いた、四人は確認テストを合格してすぐに帰ってしまった。

そう優奈を除いて……

「……また落ちちゃった……」

「そう落ち込むな。もう一回、間違ったところ教えてやるからな」

何故か今日に限って優奈だけが確認テストでも不合格してしまう。

ズーンと落ち込む優奈の頭の上にポンと手を置き、修は元気付けようとした。

「ごめんね、桃瀬君…。私が合格するまで帰れないんだよね……」

「別に気にすんなよ。どうせ今帰っても誰もいないし」

「え?……くるみちゃんやご両親は?」

「親は共働きでくるみは今日もバイト」

「そうなんだ。…もしかして家事も全部桃瀬君がやってるの?」

「大体はな。そんな俺をあの愚昧は何一つ手伝わないけどな」

呆れたように溜息をつく修をふふ、可笑しそうに優奈は笑った。

「笑ってないで始めるぞ、愚昧2号」

自分を笑った事の仕返しのように優奈をからかう。

「わ、私愚昧じゃないよ〜」

「愚昧じゃないならとっとと始める」

「う……よ、よ〜し」

む、と気合を入れて間違いだらけの答案に手をだす。

そんな優奈を修は柔らかく、優しく微笑んだ。

最後の解答欄に答えを書き、ん〜っと体を伸ばす。

やっとの事で二回目のテストも終わり、優奈は前に座ってる修に目を向けると……

「zzzz」

ぐっすりと寝ていた。

集中していたから気付かなかったのか、すでに窓の外は真っ暗になっていた。

自分の腕時計を見ると、七時を過ぎたところだった。

――もうこんな時間だ…全然気付かなかった……。とりあえず、桃瀬君を起こさないと。

修の体に手をかけ声を掛けようとしたが、ぴたっと動きが止まる。

――桃瀬君の寝顔、こんな間近で見たの初めてかも…。

じ〜、と修の顔を見て、優奈は改めて思う。

――それにしても、桃瀬君はやっぱカッコいいな。アイドルスターとかならないのかな?

桃月学園でも修は犬神とトップを争うくらいのハンサムな少年でしかも性格も明るいから

ファンも多そうである。

――桃瀬君、好きな人いるのかな…?……やっぱ優麻ちゃんのような何でも得意な子じゃないとつり合わないよね…。

――…やっぱ優麻ちゃんが好き…だよね。

――そうよ……私なんかより優麻ちゃんの方がぴったりだよね………。

修の顔を見れば見るほど深く考えてしまい、悲しくなってしまう。

――桃瀬君……。

それは優奈の嫉妬からか、独占欲からか分からない。

でもここで止めてしまったら、もう修は遠くに行ってしまうのではないか。

そう思った、優奈はゆっくりと修に顔を近づけた。

唇まであと10cm…5cm…4cm…3cm…2cm…1cm…

ちゅっ。

とても柔らかい感触、そして温かいキスだった。

唇が離れて、ぽ〜っとまた修の顔に見惚れてしまう。

まだぐっすりと寝ている。

自分がキスされた事にも気付いていない。

――って私、何してるの〜!?

突然、自分のしたことの重大性に気付きだす優奈。

――ひ、人が無防備のときにわ、私、キス、キス、キスしちゃったよ〜!?最低だ〜、私って……。

自分の頭をぽかぽかと叩きながら、今更だが後悔する。

そんな時にタイミング良く、修は目を覚まし目の前でぽかぽかと頭を叩く、優奈を不思議そうに見る。

――何やってるんだ、こいつ?

「もう、テスト終わったのか?」

「ひぃあ!?桃瀬君!?え、えっとえっと……」

目が渦巻き状に回り、思考が追いついていない様子の優奈を怪訝そうに見ると机の上にあるテスト用紙に目を通す。

「一応全部終わったんだな……ってもう外真っ暗だな」

「え、あ、う、うんうん、そ、そうだね」

「…挙動不審みたいだぞ、お前」

「わ、私挙動不審じゃないよぉ!ほ、ほらぁ。いつもの私でしょ?」

平常になろうとするが、やっぱ怪しい…。

「…ま、いっか。もうそろそろ遅いし、今日は帰るか」

「う、うん。そうだね。か、帰ろうか…。」

修は唇を奪われた事にまったく気付いた様子もなく、鞄に荷物を入れ帰り支度をしていた。

その様子にほっと安心し、優奈も帰り支度を整えようとする。

――本当何やってるんだろ……私…。

「暗いし、家まで送ってやるよ」

――え?

「いいよ、桃瀬君。そんな悪いよ」

「最近、物騒だろ?一人にするのは危ないぜ。遠慮するなよ」

さっきあんなことしたのに自分に優しくされると気を置いてしまう。

でも修と二人っきりで帰れる事が今までに一度も無く、いつもなら犬神や都、くるみといった同じ中学出身の人と帰ることが多く、また委員長会議のある日などは二年や三年の先輩と帰る事もあり、こういった機会は滅多にない。

――…一緒に帰りたいけど、ついさっきあんな事してしかも一緒に帰るのは何か桃瀬君に悪いよ……。で、でもこんな機会はもうこれから無いかもしれないし…。

優奈の頭の中では、罪悪感と修との帰宅を天平にかけてる。

交互に重くなったり軽くなったり……。

「……えっと…ならお言葉に甘えちゃおうかな?」

えへへ、と嬉しそうに誘いに乗る。

最後は修との帰宅が重かったようだ。

「そしたら一条さんが『相撲で勝った人の案を採用しましょう』とか言うんだぜ。何で行事の案を相撲で決めるんだよ、とか全員思ったぜ」

可笑しそうに笑いながら、以前の委員長会議の事を話す修を優奈はぽ〜っと見つめる。

正確に言えば、修の唇を見入る。

「…俺の話しつまらないか?」

「え?ち、違うよ!?ちょっと考え事してね」

「ふ〜ん……また下ネタとかエロの事か?」

「ちが〜う!私そんなこと考えてないよ!というか何時もそんな事考えていません!」

「だってよ、この前のプールの時勝手に妄想してたじゃないか」

「あ、あれは桃瀬君が悪いの!」

「…俺のせいなのか?」

興奮気味に否定する優奈に圧倒され、修は反論できずたじろいだ。

「………ねぇ桃瀬君」

「ん?」

「やっぱ桃瀬君も女の子とお付き合いするなら、自分につりあってる子がいい?」

「……え?」

「えっとね…こう例えるのは晶ちゃんに悪いんだけど、成績とか優秀な犬神君と晶ちゃんがお付き合いするのにつりあってると思う?仮の話だよ?」

――優麻ちゃんとお付き合いするのと私とお付き合いするの、どう思う?

「ん〜……」

――やっぱ、優麻ちゃんの方がいいよね……私とじゃつりあわないもん…。

俯いたままの優奈の顔を見つめて、それからゆっくりと口を開いた。

「別に誰が付き合おうがいいんじゃないか?」

「……え?」

「そんな成績がいいからこの人と付き合うのは似合うとか、似合わないとかそんな関係ない事だ。好きになったんならそれでいいじゃないかな?」

「そう?」

「仮に犬神と宮田さんが付き合っても、周りの人が口出す事はないと俺は思うな」

「桃瀬君もそういう立場になったら、そう思う?」

「思う。そんなんで人の価値や恋愛は決まるものじゃない」

――………よかった。

「…へ〜、お前好きな男でもできたのか?」

にやにやと意地悪そうな顔で優奈をからかう。

「そ、そうじゃないよ〜!と、友達が私にそう相談してきてね。それで私が男の子の意見として桃瀬君に聞いただけだよ」

「嘘つくならもっと上手い嘘つけよ。ばればれだぞ」

「嘘じゃないもん!本当のことだよ!」

静寂な夜の道に男女の喧騒が響く。


翌日………

「ほらほらすごいでしょ〜!私の作った衣装がファッション雑誌に載ったんだよ!」

「いいから机の上に乗るな」

――……優麻ちゃん、また桃瀬君の机に乗ってる……。

嬉しそうに修の机に乗って雑誌を見せ付ける優麻に嫉妬まじりの視線を向ける。

――わ、私だって!



「何よ〜、嬉しくないの?」

「別に嬉しいとかそんな思わない」

途中、視界から何かが入ってきたと同時に柔らかい感触が太ももから感じる。

「……何やってるんだ、お前」

大胆にも優奈は修の太ももの上に乗って恥ずかしそうにしている。

普段の優奈には予想できない行動だ。

「えっと……えへへ、見て桃瀬君!私の作品も載ったんだよ!」

呆然としている優麻からばっと雑誌を取り、大きく広げて見せた。

しかし、そんな事よりもどう反応していいのか修はさっぱり分からない。

「えへへ」

嬉し恥ずかしそうに微笑む優奈を見てクラスメートは唖然としている。




――――私だって桃瀬君が好き。

――――でも好きなだけじゃ駄目。

――――何かを行動しないとね。

――――そ、それに私は桃瀬君とキスしちゃったもんね。

――――優麻ちゃんや他の人よりも一歩先に進んだよ。


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